シリーズコラム『木を見て。森も見る。』 ②日本の木材はどこから来ているの?

シリーズコラム『木を見て。森も見る。』第2弾では、木材の流通をテーマにお届けします。
普段の生活の中で、家具や建材などの木の製品はごく身近にありますよね。
でも、「木を見て森を見ず」という言葉があるように、目の前の“木”がどこから来たのか、どんな道のりを経て私たちの手元に届くのか——そんな背景まではなかなか意識しません。
日本の木材自給率がどう変わってきたのか。
海外からの輸入材がどれほど暮らしを支えているのか。
そして、なぜ時々“ウッドショック”のような出来事が起きるのか。
今回は、木のある暮らしをより深く理解するために、木材の流通のあれこれを紐解いていきたいと思います。
第1弾『木を見て。森も見る。』①日本の森林の現状と役割>>
シリーズコラム『木を見て。森も見る。』
②日本の木材はどこから来ているの?
1.戦後、木材需要は一気にピークへ
2.自給率はなぜ再び上がり始めたのか
3.輸入木材は地球を半周してやってくる
4.ウッドショックはなぜ繰り返されるのか
5.日本の森林を使いこなせる未来へ
1.戦後、木材需要は一気にピークへ
前回のコラムでは、戦後の過度な伐採によって“はげ山”となった日本の山々が、植林活動によって少しずつ緑を取り戻していった歴史を紹介しました。
あの復活の裏側には、当時の日本が抱えていた“木材不足”という深刻な事情があります。
第二次世界大戦後、日本は家や学校、工場など、国づくりに必要な建物を次々と再建する必要がありました。そこで求められたのが、大量の木材です。
しかし、伐り過ぎによって山の木は少なく、植林しても木が使えるようになるには何十年もかかります。いわば「使いたいのに育っていない」という、国内の木材供給が追いつかない状態が生まれていました。
その結果、木材価格は急上昇し、日本は足りない分を海外から調達するようになります。これによって木材自給率は急速に下がり、2002年(平成14年)には18.8%まで低下しました。

引用:林野庁「令和5年木材需給表」の公表について
さらに、輸入を後押しした経済の動きもあります。
・1960年(昭和35年):木材の段階的輸入自由化
・1973年(昭和48年):為替変動相場制への移行
・1985年(昭和60年):プラザ合意による急激な円高
これらにより木材輸入がぐっと増え、時代は一気に“輸入頼み”へ。
こうして日本の木材利用は、国産から海外へと大きく舵を切ることになったのです。
2.自給率はなぜ再び上がり始めたのか
2002年を底に、日本の木材自給率は少しずつ回復していきます。
その要因の一つとして、合板製造の技術が進化し、これまで使いにくいとされていた小径木や間伐材、曲がった木など、さまざまな国産材が活用されるようになったことがあります。
とはいえ現在も、日本で使われる木材の内訳はおおむね
・約3分の2が輸入材
・約3分の1が国産材
となっており、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、オーストラリア、ベトナムなどからの輸入が多くを占めています。
自給率は回復傾向とはいえ、まだまだ日本の木材利用は海外に依存しているのが実情です。
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森林・林業白書 参考資料(令和6年度)を元に作成
3.輸入木材は地球を半周してやってくる
輸入材は、生産国内での陸送に加え、長い海の旅を経て日本へ届けられます。
特に欧州から来る木材は、20,000km以上という、地球の半周にも匹敵する距離を移動しているのだとか。

引用:一般社団法人ウッドマイルズフォーラムウェブサイト
私たちの身近にある木材の多くが、こんなにも長い距離を旅してきている――
そう考えると、輸送に伴う環境負荷の大きさについても、改めて考えさせられるものがありますね。
4.ウッドショックはなぜ繰り返されるのか

日本が木材を海外に大きく依存している以上、他国の政策や需要の変化に影響されやすい構造は避けられません。
その結果、不定期に木材価格が急騰する「ウッドショック」が起こります。
これまでの主なウッドショックを振り返ると——
・第一次(1990年代):米国のマダラフクロウ保護により北米材の供給が減少
・第二次(2006年):インドネシアの違法伐採対策強化で南洋材が不足
・第三次(2020年):コロナ禍の住宅需要・DIY需要の増加に供給制限が重なり世界的な木材不足へ
特に2020年のウッドショックでは、日本でも木材不足と価格高騰が起こり、建材業界全体が大きな影響を受けました。
5.日本の森林を使いこなせる未来へ

日本には、実は豊富な森林資源があります。
しかし、林業の担い手不足、伐採した木を運び出すための道路整備、加工の体制など、乗り越えるべき課題も多く残っています。
もしこれらの課題を少しずつ解決し、国産材をうまく活用できるようになれば、海外情勢に振り回されない、安定した木材供給を実現することも可能になります。
森林は“守る”だけでなく、“使いながら守っていく”ことが重要。
まさにここでも、「木を見て、森も見る」という視点が欠かせません。
■ おわりに
日本の森林をどう守り、どう活かしていくのか。
そのヒントは、私たちの暮らしの中で木材をどう使っていくかにあります。
次回の第3弾では、これからの木材利用の動きを、いくつかの視点からご紹介する予定です。
未来に向けて、木がどんな役割を担っていくのか――
ぜひ続編もお楽しみに。
― To be continued —
第1弾『木を見て。森も見る。』①日本の森林の現状と役割>>